パナソニックホールディングス社内コミュニケーションの立役者 宮島さん

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株式会社Panasonicに入社後、「キャリクロ」のほか、イノベーションを創出しやすい社内風土や環境づくりを推進し、社内インキュベーションサークル「BOOST」の発起メンバーでもあるてきた宮島勇也氏(以下、宮さん)に、イノベーションの起こし方やチームの巻き込み術についてインタビューを実施させていただきました。

パナソニックホールディングス社内コミュニケーションの立役者 宮島さん

―― さっそくですが、御社で働いている友人から、みんなの「好き+やりたい」をベースにつながることで、社内の活性化に成功していると伺いました。実際に、その広がりの規模はどれくらいでしょうか?

よろしくお願いします。規模は、2019年4月に「宇宙コミュニティ」で数人からスタートさせて、2023年の現時点では「宇宙コミュニティ」が600名、「女性コミュニティ」は800名、「キャリクロコミュニティ」は2300名ですね。

―― 4年間で3700名も!すごい広がりですね。

パナソニックは課題から始まったコミュニテはすぐに数百名は増える特性があります。
これは他社にはないポテンシャルだと思います。実績としては、社員のモチベーションの向上、知識・視野拡大、人脈形成などに大きく貢献できたと思います。

――  趣味つながりから社内の仲間を広げてこられた宮さんですが、従業員23万人もの大組織でここまで成長した秘訣はありますか?グロースまでのドラマも交えて深くお聞かせください。

もちろん、いいですよー。
成功の秘訣はコレ。
有志や趣味というたて付けで、ちょっとずつ誘って「楽しいでしょ、鍵はかかっていないんだよ」と啓蒙しました。

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―― 確かにオープンな場と聞くと誰でも気負いなく参加しやすくなりますね。お一人でスタートして成長させるのは大変ですよね?

そう、1人で全て実行するのは不可能です。
そこで、まず「イノベーションを勉強する」チームを結成しました。

夜中に秘密結社的に集うイメージで、私が提案して、持ち帰ってブラッシュアップしていくスタンスでしたが、上からの判断がなかなか進まず、これは徒労に終わりました。
でも、その経験からイノベーションする人を量産すれば良いのでは!とひらめき、3年前に「ブーストコンテスト」を発足しました。

――  秘密結社的ってなんだかワクワクしますね!そのような組織環境で、失敗により諦め体質になる人も多い中、失敗から量産スタイルを思いつかれた発想の転換は本当にすごいなと感じます。
ところで「BOOST CONTEST(ブーストコンテスト)」とは何ですか?

BOOST CONTESTは有志で行っている社内起業家育成プログラムです。
新規事業に興味がある方や、これまでの自分の成長やこれからのキャリアプランに満足していない方など新規事業初心者のかたが、3ヶ月の短期間に、「マインドセット」「スキル」「コミュニティー」を提供して、行動できる人「Doer(ドゥーアー)」に成長し、卒業後は社内のDoerを増やすBooster(ブースター)を量産して、パナソニックをイノベーションの量産ができる会社にするのが目的です。

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ロケット(Doerがやりたいこと)を打ち上げる土台のエンジンとして、機動力となる伴走メンバーを配置する。

年間100人増やすことを目標に、DoerをBoosterにして、コミュニティメンバーへ、マインドセット+スキルセットの提供をしました。
この方法ですが、実は2018年に参加した経済省主催のイノベーター育成プログラム「始動」で教えてもらった事を自分流にアレンジしてメソッド化しました。

―― 宮さんが学ばれた体験を自社に持ち帰り、ナレッジを還元しているのですね。

そう。これは使わない手はないと思いましたよ。
ちなみに、宇宙事業をやりたい人が集まる「航空宇宙事業本部」ですが、本気の部活とかいて本部と名付けました。
ここに宇宙ネタを持ってくれば、好きなことや興味が同じ同士から、多面的なアイディアも多く出てきて、ディスカッションも活発になるし、なによりみんなの「やろう!」というモチベーションの栄養となっています。
このスキームは他でもイケる!と確信して、仕組み化しました。そして、他のコミュニティにも横展開すると、どんどん浸透していったのです。

―― 次は「女性コミュニティ」について教えてください。

自分の強みを活かして会社に貢献したいと考えている女性社員中心の社内コミュニティです。
女性たちが勇気と刺激を与えあい、自らが輝くためのプラットフォームとして「PWN(Panasonic Women's Network)」をつくりました。

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活動の様子1:「ウーマン・リーダーズ・サミット」では、グループCEOの楠見を交えてパネルディスカッションを実施

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活動の様子2:女性役員やリーダーをゲストに招いて交流する「女性リーダートークリレー」を開催

―― PWNはどのようなきっかけでできたのですか?

もともと2018年に同僚の女性から「私のロールモデルを紹介してください」と相談されたことから始まりました。すぐにいい人を紹介できなかったので、私の知っている女性社員を集めてZOOM飲みを開催しました。その時に参加した方から「こんな組織横断の女子会したことない!」の一声で、定期開発するようになりました。

―― やはり女性社員のみなさんも自分の目指す姿の先輩像が欲しかったのですね。具体的にはどんな活動をされていますか?

各月で女性リーダーをゲストにした「女性リーダートークリレー」を開催しています。
『笑っていいとも』スタイルで、次の登壇者を紹介いただくので、運営側は楽ですよ。
今では17回も開催しました。その他、女性技術者トーク、女性課長トークや社外の活躍されている方をお招きしたトークイベントも開催しました。
また、口コミだけで集まったTeamsコミュニティは今や800人以上の女性社員に活用されています。

―― オンラインのコミュニティではどんなことを話されていますか?

日々の相談ごとや、女性にまつわる新規事業開発などに活用されています。「女性が輝くための職場つくりとは?」と、自分も正解を知らないのでPWNの中で学ばせてもらいながら活動しています。

―― 女性コミュニティということですが、男性も参加されているのですね。会社全体で多様な働き方やワーク・ライフ・バランスなど、自分らしく働ける環境づくりを推進されているのですね。

前向きな気持ちや行動を阻害してしまう「ジェンダーによるアンフェア」を無くすことをゴールとして、イベントなどを通じて人脈形成の場づくりに取り組んでいます。
そこで生まれたつながりから互いに刺激を与えあうとともに、一人ひとりの声や想いを集めて会社の変革へつなげていくことを目指しています。

―― 続いて「キャリクロ」について教えてください。

「キャリアクロスオーバー(略して「キャリクロ」)」は、所属部署や担当業務が異なる者同士が、「バーチャル同期」となって相談しあえる社内コミュニティです。

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活動の様子1:運営メンバーが全社イベント「グループDEIフォーラム」に登壇

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活動の様子2:2023年2月現在、約2,000人の社員が「バーチャル同期」として交流中

―― とてもユニークな取り組みですね。キャリクロはどのようなきっかけでできたのですか?

「転職組で同期がおらず、自分は社内にコミュニティがなくて寂しい」というメンバーのインサイトを知り、バーチャル同期を構築しようと思いました。そして、コロナ禍ということもあり、まずはオンラインでTeamsのコミュニティをつくりました。

―― 仕事もプライベートも何でも相談できる同期は、働く心を豊かにしてくれるだけではなく、会社生活を続ける上でも大切な存在だとおもいます。でも、入社時期によっては同期がいなかったりすると、やはり孤独を感じたり、孤立する方もいるのではないでしょうか。

背景として、近年、非常に多くのキャリア採用者が入社するようになりました。
キャリア採用者は、新卒で入社した社員と比べて相談しあえる同期が少ないという課題を抱えています。
一方で彼らは、それぞれ異なる企業や業界での経験を通じて培った独自の知識を持っています。
キャリクロは、そんなキャリア採用者同士を「バーチャルでつなぐ」ことで、お互いが日々の困りごとを質問でき、解決しあえる場として誕生しました。

―― 中途のキャリア採用組にはとてもありがたいコミュニティですね。

現在は、キャリア採⽤者に限らず多くの社員や経営層までもが参加するコミュニティへと成長しました。
立場や所属部署に依存しない、情報への公平なアクセスの機会(Equity)を得られる場としても機能しています。

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趣味・年代・役職・同期など、360度でつながる、職場以外の「居場所」


ーー 経営層までもコミュニティに参加されるようになったのですね。上下ボーダーレスですが、風通しはいかがですか?

上下のたてだけじゃないですよ、従業員同士のよこよこと、ななめもあります(笑)ななめは組織や年代を超えた繋がり。職場以外の『居場所』を提供してくれるネットワークがEmployee Resource Groupなのです。

ーー 360度ですばらしいです。
宮さんの有志コミュニティが醸成され広まった背景に企業特有のカルチャーはありますか?

そうですね、自部署では提案すると否定や批判から入ることが多かったです。
そうなると提案したりチャレンジする人のモチベーションを上げることができません。行動の意義や説明を求められますが、行動しないと変化は生まれないので、解けない問題を机上で問うているようなものです。

―― だから"趣味"という枕詞をつけられたのですね。

私は「趣味でやります」と言うことで、組織のシガラミから解放され行動することができました。
行動するといろんな変化からさらなる学びが得られます。趣味で自由に行動した人の言葉にはファクトと自信が付与され、出過ぎる杭となって組織の人が批判ができなくなります。
結果が生まれれば、組織や経営層からも支持をされ、さらに動きやすくなりました。

―― 組織によって何かやるならKPIを決めようという習わしがありますが、いかがですか?

うちは、有志やPJを結成するときにKPIを決めず、リーダーも決めないで、個人が損失可能な範囲でやりたいことをやっていいようにしています。
そうするとおのずと結果が出てきます。そんな自立分散な組織を目指しています。

―― 実際に結果を出してるのがすごいですね。ところで自立分散な組織とはなんですか?

コミュニティ参加者が主体者となる仕組みです。自分が主体者となれば、行動から成功体験が生まれ、また行動ができ好循環が生まれます。

後編に続きます)

取材にご協力いただいた方

今回取材にお答えいただいたのは、株式会社パナソニックホールディングスの宮島さんです。東レ株式会社から2015年にパナソニックに転職。出る杭打たれまくり「趣味イノベーション」を公言する。組織をはみ出て、現在は、宇宙〜癌の再生医療まで幅広くイノベーションに従事。みんなからは、宮さんと呼ばれ親しまれている。

パナソニックホールディングス株式会社 One Panasonic幹事 宮島勇也さん

パナソニックホールディングス株式会社 One Panasonic幹事 宮島勇也さん

One Panasonic幹事 / 経産省主催国家プロジェクト「始動 Next Innovator2018」第4期生 / AIS社Make Happy Project 新人事制度eトレード考案者 / IS社Make Happy Project 未来会議創設者 / 社内インキュベーションサークル BOOST 発起メンバー

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