急速に変化するビジネス環境の中で、企業が競争力を維持し、成長を続けるためには、従業員のスキルアップが不可欠です。特に、デジタルトランスフォーメーション(DX)が進む今日、デジタル領域に精通した人材の育成が急務となっています。そこで注目されているのが、「リスキリング」です。
そこで今回は、リスキリングがDX時代に求められる理由や背景、企業が導入するメリット・デメリット、注意点やポイント、リスキリングの導入で成功している企業の事例などをまとめました。
目次
●リスキリングとは?
●リスキリングの類似用語とその違い
●リスキリングが注目される理由
●企業と従業員にとってのリスキリングのメリット
・企業側のメリット
・従業員側のメリット
●リスキリングのデメリットは?
●DXにおけるリスキリングの重要性
●DX推進に必要なDX人材とは
●企業によって変わるDX人材の役割と必要性
●経済産業省が定義する5つのDX人材像
●どのDX人材にも共通して求められる3つのスキルとは?
●IPAが定義するDX推進における7つの専門職種
●どの業界でもリスキリングで学ぶべきの6つの領域とは?
●リスキリングで学ぶべき具体的なスキルは?
●リスキリング導入のための5ステップ
●効果的なリスキリングを進めるためのポイント
●リスキリングを導入している企業事例
●まとめ
リスキリングとは?
リスキリング(Reskilling/Re-Skilling)とは、現在の職務とは異なる職務や新しい分野に必要なスキルを習得する/させることを指します。経済産業省は、リスキリングを以下のように定義しています。
「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」
【出典】経済産業省「リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―」
このように、リスキリングは新しい知識やスキルを学ぶことで異なる職務への移行や新しい分野への挑戦を促進する取り組みです。企業においては、従業員の育成プログラムの一環として注目されています。従業員に新たなスキルを身につけさせることで、デジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させたり、人材不足を解消したり、採用コストを削減したり、自律的な人材を育てることが期待されています。
リスキリングの類似用語とその違い
学び直しや、学習といった意味を持つ言葉は、さまざまなものがあります。リスキリングと似た言葉が多くて混乱してしまう人もいるかもしれません。これらの用語は、いずれも個人の能力開発や適応力の向上に関連していますが、それぞれ重点を置く点が異なります。リスキリングに関連する用語について、それぞれの意味と違いをまとめました。
- アップスキリング(Upskilling)
アップスキリングは、既存のスキルを向上させることに重点を置いています。一方、リスキリングは全く新しいスキルを習得することを目的としています。アップスキリングは現在の仕事や職種において、より高度な知識や技術を身につけることを意味します。
例:営業マンがより高度な営業スキルや顧客分析スキルを身につけて、営業成績を向上させる。 - リカレント教育(Recurrent Education)
リカレント教育は、学校教育を終えた後に、再び教育機関に戻って学ぶことを指します。リスキリングが主に職業スキルに関連しているのに対し、リカレント教育はより広範囲な学習を含みます。リカレント教育は、個人の興味や社会的ニーズに応じて、様々な分野の知識を習得することを目的としています。
例:社会人になってから大学や専門学校に通い直して、新たな専門知識を習得する。 - OJT(On the Job Training/職場内教育訓練)
OJTは、職場内で行われる実践的な教育訓練のことを指します。リスキリングが新しいスキルの習得に重点を置いているのに対し、OJTは主に現在の仕事に必要なスキルを向上させることを目的としています。OJTは、先輩社員が後輩社員に仕事の進め方を指導したり、実際の業務を通じて技能を伝授したりすることを含みます。
例:先輩社員の指導を受けながら、実際の業務を通して営業のノウハウを学ぶ。 - アンラーニング(Unlearning)
アンラーニングは、古い知識や習慣を捨て去り、新しい知識や考え方を受け入れることを意味します。リスキリングが新しいスキルの習得に重点を置いているのに対し、アンラーニングは過去の知識や経験にとらわれずに、新しい状況に適応することを目的としています。
例:従来の営業スタイルにとらわれず、デジタルツールを活用した新しい営業スタイルを身につける。 - 生涯学習(Lifelong Learning)
生涯学習は、個人が生涯にわたって自発的に学び続けることを指します。リスキリングが主に職業スキルに関連しているのに対し、生涯学習はより広範囲な学習を含みます。生涯学習は、個人の興味や関心に基づいて、様々な分野の知識を習得することを目的としています。
例:趣味の教室に通ったり、オンライン学習で新たな知識を習得したりする。
リスキリングが注目される理由
リスキリングが注目を集めるきっかけとなったのは、2020年に開催された世界経済フォーラム年次総会、通称ダボス会議です。この会議では「第4次産業革命によって数年内に8000万件の職が消える一方で、9700万件の新職が生まれる」という予測が発表されました。また、2030年までに全世界の10億人に対して質の高い教育やスキル、職を提供する「リスキル革命(Reskilling Revolution)」も提唱されました。
こうした発表が、リスキリングへの関心を急速に高めるきっかけとなったのです。
他にも、リスキリングが注目される理由は主に次の5つがあげられます。
・DXの推進とデジタル人材の不足
経済産業省は、日本企業の競争力強化のためにデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しています。 経済産業省「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」(2018年)では、企業が競争力を維持・強化し、新たな価値を創出し続けるためには、DXを実現することが不可欠であるとされています。しかし、DXの推進には、AI、データ分析、ソフトウェア開発など高度なデジタルスキルを持つ人材が不可欠です。情報処理推進機構「IT人材白書2022」によると、2030年には最大79万人のIT人材が不足すると予測されています。現状では、多くの企業が深刻なデジタル人材不足に悩まされており、リスキリングによる人材育成が急務となっています。
・VUCA時代への適応
現代は、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)が高いVUCA時代と呼ばれています。変化の激しい時代において、企業は市場の変化に柔軟に対応し、新たなビジネスチャンスを掴んでいく必要があります。
そのためには、従業員一人一人が常に新しい知識やスキルを学び続け、変化に対応できる能力を身につけることが重要になります。リスキリングは、VUCA時代を生き抜くために不可欠な取り組みと言えるでしょう。
・少子高齢化による労働力不足
多くの国で人口減少が進行しており、労働力不足が深刻な課題となっています。日本はその典型例で、高齢化も相まって生産年齢人口が減少しています。内閣府の「令和3年版高齢社会白書」によると、2025年には生産年齢人口が1995年の75%程度まで減少すると推計されています。このような状況下では、労働者一人ひとりの生産性を向上させることが不可欠となります。リスキリングは、既存の労働者のスキルを向上させ、より少ない人数で効率的に業務を遂行するための重要な手段として注目されています。
・技術的失業のリスク
リスキリングが注目される理由として、技術的失業のリスクがあります。技術の進化により、一部の職業が消失する一方で新たな職業が生まれます。Economic Forumの2020年調査では、テクノロジーの進化により今後5年間に約8,500万人の雇用が消失し、新しく9,700万人の雇用が創出されると予測されています。昭和から令和にかけて、預貯金集金人、保険料集金人、ディーゼル機関士、速記学校の講師、タイピストなどの職業が消失しました。急速な技術革新により、ビジネスの産業構造そのものが変化すると考えられており、企業と個人は変化に向き合い対応する必要があります。
・人的資本経営へのシフト
近年、従業員を「コスト」ではなく「資本」と捉え、その能力や経験を最大限に活かして企業価値向上につなげる「人的資本経営」の考え方が広まっています。
「人材版伊藤レポート2.0」では、人的資本経営の重要性と、リスキリングによる人材の能力開発・活用が強調されており、人的資本経営を実現する人材戦略に必要な共通要素の1つとして、リスキリング・学び直しをあげています。企業は人的資本への投資とリスキリングを通じて、持続的な成長を目指すことが求められています。
企業と従業員にとってのリスキリングのメリット
リスキリングは、企業と従業員双方に多くのメリットをもたらします。ここでは、企業と従業員それぞれのメリットを整理してみました。
企業側のメリット
- 人材不足の解消と競争力強化
急速に変化する市場ニーズに対応するために、企業は必要なスキルを持った人材を確保する必要があります。特に、デジタル化やグローバル化が進む中で、専門スキルを持った人材の不足は深刻化しています。リスキリングは、社内の既存人材を活用して必要なスキルを育成する有効な手段となり、人材不足の解消と競争力の維持・強化に貢献します。 - 従業員の定着率向上と採用コスト削減
リスキリングを通じて従業員のスキルアップを支援することは、従業員のエンゲージメントや企業へのロイヤルティを高める効果があります。従業員が自身の成長を実感し、会社に貢献できていると感じることで、定着率が向上します。その結果、新規採用にかかるコストや時間を削減できます。 - 生産性向上とイノベーション促進
従業員のスキルレベルが向上することで、業務効率化や意思決定の迅速化が期待できます。また、新しいスキルを習得した従業員は、これまでとは異なる視点でアイデアを創出し、イノベーションを促進する可能性があります。これは、企業全体の生産性向上だけでなく、新たなビジネスチャンスを生み出すことにもつながります。 - 自律型人材の育成につながる
リスキリングを通じて、従業員は自ら学ぶ姿勢や適応力を身につけることができます。これは、自律型人材の育成につながります。自律型人材とは、変化する環境に柔軟に対応し、自ら考え行動できる人材のことです。このような人材を育成することは、企業の持続的な成長に不可欠です。
従業員側のメリット
- 市場価値の向上とキャリアアップ
リスキリングを通じて、変化する市場で求められる最新スキルを身につけることは、従業員自身の市場価値を高めることに繋がります。高い市場価値を持つ従業員は、社内でのキャリアアップや、より良い条件での転職の機会を得やすくなります。 - 雇用不安の軽減と長期的なキャリア形成
技術革新や産業構造の変化により、現在の仕事が将来的になくなる可能性があります。リスキリングを通じて新たなスキルを習得することは、将来の雇用不安を軽減し、長期的なキャリア形成に役立ちます。また、複数のスキルを持つことで、様々な職種や業界で活躍できる可能性が広がります。 - 仕事へのモチベーション向上と自己実現
新しいスキルを習得することは、自身の成長を実感し、仕事に対するモチベーション向上に繋がります。また、リスキリングを通じて自身のキャリアプランを実現しやすくなることで、自己実現や自己肯定感を得ることができます。これは、仕事に対する満足度を高め、働きがいを感じることに役立ちます。 - 適応力とレジリエンスの向上
リスキリングを経験することで、従業員は変化に適応する力やレジリエンス(回復力・逆境力)を身につけることができます。これは、急激な環境変化や困難な状況に直面した際に、柔軟に対応し、乗り越える力を養うことに繋がります。適応力とレジリエンスは、従業員の成長だけでなく、企業の危機管理能力の向上にも貢献します。
リスキリングを導入する上で考慮すべきデメリット
リスキリングによって社内の人材が新しいスキルを身につけることは、企業の成長に大きなメリットをもたらす可能性があります。一方で、リスキリングには企業側には考慮すべきいくつかの」リスクもあるため、導入前に慎重に考えることが大切です。ここでは、主にの3つのデメリットについてまとめていきます。
- 導入の負担と費用
まず、費用面での負担が挙げられます。リスキリングを実施するための講習や研修、教育プログラムの多くは無償ではなく、実施には一定の資金が必要です。外部講師を招いたり、セミナーに参加させたりする場合には、事前にしっかりとした予算計画が要求されます。特に、質の高い教育を提供し、自社に利益を還元することを考えると、効果的なコスト管理のための準備が重要です。 - 社員のモチベーション維持の難しさ
新しいことを学び続けるには、時間とエネルギーが必要です。特に日々の業務に追われている状況では、新しいスキルを学ぶための意欲や時間を見つけるのが難しいこともあります。
また、一部の従業員は学ぶことに意欲的であっても、全員が同様に捉えるわけではありません。業務に追われる中で新しい知識を学ぶことがストレスとなり、モチベーションが低下するリスクもあります。リスキリングを導入する際には、詳細な計画が不可欠です。 - 費用対効果の懸念
リスキリングを導入することで従業員が新たな学びを得たからといって、仕事ですぐに成果を上げられるとは限りません。学んだことを活かせない状況は、宝の持ち腐れ状態でもあります。企業としてはリスキリング導入という投資に対する効果が見込めないのであれば、長期的に取り組みを継続することは困難です。その結果、リスキリングによって得たスキルが活用されず、投資の効果が見込めない状況が生じると、長期的な取り組みを続けることが困難になるかもしれません。したがって、企業はリスキリングの目的を明確に設定することが求められます。
DXにおけるリスキリングの重要性
「リスキリング」と対をなすキーワードとして、よく取り上げられるのが「DX」です。DXは「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)」の略で、デジタル技術を活用して業務やビジネスモデルの革新を図ることを指しています。現在、この概念は広く知られるようになっています。
DXにおいてリスキリングが重視される理由は、DXの成功にはデジタル技術に精通した人材、いわゆるDX人材の育成が鍵を握るからです。業務プロセスやビジネスモデルをデジタル化するには、デジタルツールやシステムを自在に操れる能力が必要です。しかし、企業の多くはこのような人材の確保に苦慮しています。
そこで注目されているのが「リスキリング」、つまり既存の従業員のスキルや知識を新たに養成する取り組みです。リスキリングを実施し、DXに必要な専門知識やスキルを習得させることで、DXの進展が一層加速されるでしょう。
DX推進に必要なDX人材とは
DX推進が叫ばれる中、企業は「DX人材」の必要性に迫られています。
DX推進には最新技術の導入が不可欠ですが、それを活用できる人材、DX人材も必要です。
DX人材とは、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するために必要なスキルや考え方を持った人材のことを指します。
経済産業省では以下のように説明されています。
自社のビジネスを深く理解した上で、データとデジタル技術を活用してそれをどう改革していくかについての構想力を持ち、実現に向けた明確なビジョンを描くことができる人材。
【出典】経済産業省「DXレポート2」
DX人材は、新しい技術を積極的に学ぶ意欲を持ち、リーダーシップを発揮しながら他のメンバーとコミュニケーションを取れる能力が求められます。
単に技術的なスキルを持っているだけでなく、ビジネスの視点を持ち、組織の中で問題を解決し、新しい価値を生み出すことができる人材が必要とされています。
前述の通り、そこでリスキリングが重要になります。従業員のデジタルスキルを向上させることで、組織全体のDX推進が加速し、競争力が高まります。DX人材とリスキリングは、企業の成長と変革を支える車の両輪といえるでしょう。
企業によって変わるDX人材の役割と必要性
多くの企業で進められているデジタルトランスフォーメーション(DX)は、大きく3つのタイプに分類されます。その3つとは、仕事のやり方を変えるプロセスのDX、はたらき方を変えるワークスタイルのDX、新しい事業を生み出すビジネスのDXです。それぞれのタイプに応じて、求められるスキルや専門性を備えた人材像は異なるため、自社が推進するDXのタイプを正確に把握し、それに適したDX人材を見極めて採用することが重要です。
ここでは、3つのDXのタイプとその内容、そして具体的な取り組み例を整理していきます。
①プロセスDX「仕事のやり方を変える」
プロセスDXは、業務プロセスの効率化や自動化を目指し、デジタル技術を活用して既存の業務フローを再構築する取り組みです。データ分析やAIの導入によって、より迅速かつ効率的な業務運営を実現します。
取り組み例
・RPA(Robotic Process Automation)による定型業務の自動化
・業務システムのクラウド化による、情報共有の円滑化や業務の効率化
・データ分析ツール導入による、業務プロセス上の課題発見と改善
②ワークスタイルDX「はたらき方を変える」
ワークスタイルDXは、従業員の働き方を柔軟に変革することを目指しています。リモートワークやフレックスタイム制度の導入、またはコラボレーションツールを活用して、チームのコミュニケーションを活性化させることが中心となります。
取り組み例
・テレワークやリモートワークを可能にするためのICT環境整備
・ 業務コミュニケーションツールの導入による、円滑な情報共有体制構築
・オンライン会議システムや電子契約システムの導入による、業務の効率化
③ビジネスDX「新しい事業を生み出す」
ビジネスDXは、デジタル技術を活用して新しいビジネスモデルやサービスを創出する取り組みです。市場のニーズを分析し、顧客価値を向上させるような新たなサービスを開発することが求められます。
取り組み例
・ IoTやAIを活用した新製品・サービス開発
・オンラインプラットフォーム構築による、新たな顧客体験の提供
・データ分析に基づいた、新たなマーケティング戦略の実施
経済産業省が定義する5つのDX人材像
DX人材に明確な定義は存在しませんが、デジタルを活用してビジネスモデルや組織を変革するためには、「デジタル技術とデータ活用のスキル」と「プロジェクトをリードする推進力」の2つが求められます。
また、経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構の発表によると、DX人材に必要なスキルは、以下の5つの人材類型に分類されています。
【出典】経済産業省「デジタルスキル標準」
ビジネスアーキテクト
DXの取組みにおいて、ビジネスや業務の変革を通じて実現したいこと(=目的)を設定したうえで、関係者をコーディネートし関係者間の協働関係の構築をリードしながら、目的実現に向けたプロセスの一貫した推進を通じて、目的を実現する人材
主な役割
・DXにおける目的の設定
・目的を達成するための関係者間の調整
・プロセスの進行管理
デザイナー
ビジネスの視点、顧客・ユーザーの視点等を総合的にとらえ、製品・サービスの方針や開発のプロセスを策定し、それらに沿った製品・サービスのありかたのデザインを担う人材
主な役割
・製品やサービスの方針、開発プロセスの策定
・仕組みやユーザー体験、イメージの設計
データサイエンティスト
DXの推進において、データを活用した業務変革や新規ビジネスの実現に向けて、データを収集・解析する仕組みの設計・実装・運用を担う人材
主な役割
・データ活用戦略の策定
・データ収集や加工やデータ分析
ソフトウェアエンジニア
DXの推進において、デジタル技術を活用した製品・サービスを提供するためのシステムやソフトウェアの設計・実装・運用を担う人材
主な役割
・製品やサービスを提供するためのシステム、ソフトウェアの設計・管理・保守
・開発や運用環境の最適化
サイバーセキュリティ
業務プロセスを支えるデジタル環境におけるサイバーセキュリティリスクの影響を抑制する対策を担う人材
・サイバーセキュリティリスクの検討、評価
・セキュリティ対策の管理や統制
・対策の実施や保守、運用
そして、同発表では、人材類型の定義について以下のように記されています。
ーーーーーーーーーーー
DXを推進する人材は、他の類型とのつながりを積極的に構築した上で、他類型の巻き込みや他類型への手助けを行うことが重要である。また、社内外を問わず、適切な人材を積極的に探索することも重要である。
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DXを推進する人材は、他の類型との連携を積極的に強化し、他の類型を巻き込んで支援することが大切です。
DX人材に共通して求められる3つのスキル
デジタル人材に求められるのは、技術的なスキルだけではありません。発想力や論理的思考、マネジメント能力、さらには対人スキルや思考力といった、業務を円滑に進めるための能力も必要です。また、すべてのデジタル人材に共通して必要とされるスキルとして、次の3つが挙げられます。
- 業務知識
DX人材は、既存の業務フローやプロセスを深く理解し、具体的な課題を特定する能力が必要です。すでに業務知識を持っているか、または迅速に習得できる人材が理想的で、課題に対して的確な施策を打ち出すことができます。 - デジタルリテラシー
デジタル技術の基礎知識や活用方法について理解し、業務に適切に取り入れることができるスキルが求められます。また、最新のトレンドを常に把握し、状況に応じて最適なソリューションを選択できる能力も重要です。 - 推進力
DX人材は、組織全体を俯瞰的に捉え、大局的な視点で物事を考えられる能力が必要です。社内外の関係者を巻き込み、組織全体の改革や業務改善に向けてリーダーシップを発揮できる人材が求められます。さらに、失敗やトラブルに直面しても、粘り強く試行錯誤を重ねて取り組みを継続できるタフな精神力も重要です。
IPAが定義するDX推進における7つの専門職種
DX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進するための専門人材の職種は多岐にわたります。独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)は「DX推進に向けた企業とIT人材の実態調査」で、以下の7つの職種に分類しています。
【参考】デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた企業とIT人材の実態調査|独立行政法人情報処理推進機構
- プロダクトマネジャー
DXやデジタルビジネスの実現を主導するリーダーとして組織をけん引する存在です。具体的な役割は、ビジネス戦略の策定、プログラムの再構築、デジタル活用、予算管理など多岐にわたり、誰よりも現状の組織課題の解決に対するコミットメントが求められます。 - ビジネスデザイナー
ビジネスデザイナーは、プロデューサーが描く方向性や戦略を、具体的な企画・計画に落とし込み、計画達成に向けた推進役を担います。プロデューサーと現場で実際に動くエンジニアとの間に入り、さまざまな調整業務も行います。プロジェクトの進行中に問題が生じた場合には、ミーティングのファシリテーション役を担うこともあります。 - テックリード(エンジニアリングマネジャー、アーキテクト)
テックリードは、DXやデジタルビジネスに関するシステムを設計する役割を担います。プロデューサーやビジネスデザイナーによって具体化されたDX戦略を、自社のビジネスに合うように実現可能なものに設計していくことがミッションとなります。そのため、専門外の人たちにも理解してもらえるよう、わかりやすい言葉で説明するといったコミュニケーション力も求められます。 - データサイエンティスト
データサイエンティストは、社内外から集められた膨大なデータの分析・解析をする役割を担います。膨大なデータの中から何が課題として導きだされるか、データをビジネスにどのように生かしていくのかといったことを構想する力も求められます。 - 先端技術エンジニア
先端技術エンジニアは、機械学習やブロックチェーンなどの先進的な技術を用いて開発を行う役割を担います。最新技術は流行り廃りが早いため、常に最新の情報をキャッチアップし、自らのスキルも高められることが求められます。 - UI/UXデザイナー
UI/UXデザイナーは、DXやデジナルビジネスに関するシステムのユーザー向けデザイン制作を担います。サービスの利用率や満足度を高めるには、ユーザー体験の向上が欠かせません。例えば、操作が初めてでもわかりやすいか、デザインは見やすく使い勝手が良いかなど、ユーザーを基点に画面設計を行うためのスキル習得などが求められます。 - エンジニア/プログラマ
エンジニア/プログラマは、デジタルシステムの実装や、インフラ構築などを担います。DXプロダクトを実現するサービス開発に向けて、データベースの設計から必要な機能の実装までを行います。コーディングスキルだけではなく、プロジェクトの管理能力や外部との関係構築など幅広い対応も求められます。
どの業界でもリスキリングで学ぶべきの6つの領域とは?
現代のビジネス環境において、どのような分野でリスキリングを行うべきでしょうか。ここでは、業界を問わず重要とされる6つのスキルを紹介します。
- ITリテラシー
ITリテラシーとは、コンピュータや通信技術、情報管理、ネットワーク、安全性についての理解と活用能力を指します。具体的には、パソコンやアプリの操作、正確な情報の選別方法、SNSの理解など、広範囲な知識やスキルが求められます。デジタル化が進む現代において、IT関連の職種に就かない人々でも基礎的なITリテラシーは必須です。このスキルを身につけることで、業務の効率化や安全なデータ管理が実現できます。 - 英語
国際化が進む中、英語の重要性は増しています。企業が海外市場に進出し、ビジネスを拡大するには、英語が欠かせないスキルとなるでしょう。さらに、日本の少子高齢化に伴い、外国人労働者が増えることが予想されるため、労働者の雇用や教育においても英語が必要になります。リスキリングを通じて英語を学ぶことは、今後ますます重要な要素となります。 - マーケティング
顧客に自社の商品やサービスを届け、安定した利益を得るための仕組みを作るのがマーケティングです。商品開発や広告活動、市場の分析など多岐にわたる業務が含まれ、特にデジタルマーケティングに関するニーズは高まっています。顧客の価値観が多様化する現代では、マーケティングの知識を身につけることが不可欠です。戦略を長期間にわたり続けるためにも、定期的なリスキリングが推奨されます。 - データ分析
データ分析は、大量のデータから有益な情報を取り出し、それを活用して経営戦略や市場戦略を練る能力を指します。様々なテクノロジーが発展し、企業ごとに蓄積されるデータ量が増える中で、これを十分に活用できている企業はまだ少数です。経営者はもちろん、従業員がデータ分析スキルを習得することで、様々なデータからの課題発見が可能になります。 - 情報セキュリティ
情報セキュリティとは、情報漏洩やウイルス攻撃、システムの障害から企業を守るための対策を講じることです。デジタル社会では情報は貴重な資源とされ、適切な情報管理とリスクの理解が求められます。全従業員に情報セキュリティの知識を身につけさせることは、業種を問わず重要な側面です。 - プログラミング
プログラミングは、コンピュータに指示を与えるための能力です。デジタル化が加速する中で、企業は新しいアプリやサービスを自社で開発する必要があります。外注も可能ですが、それには時間がかかり、機会を逃すリスクがあります。また、外注ではノウハウの蓄積が難しくなります。従業員がプログラミングを学ぶことで、デジタル関連の業務への転換や自立した開発が可能になります。リスキリングを通じてこのスキルを磨くことは、有効な手段と言えるでしょう。
リスキリングで学ぶべき具体的なスキルは?
リスキリングにおいて重要な分野は、前述の「ITリテラシー」「英語」「マーケティング」「データ分析」「情報セキュリティ」「プログラミング」の6つに集約されます。以下に、それぞれの分野で必要とされる具体的なスキルを解説します。しかし、やみくもにすべてを学ぼうとするのではなく、自分のキャリア目標や市場のニーズに合わせて、学ぶべきスキルを選択することが重要です。ここでは、リスキリングで需要の高い具体的なスキルとその内容についてまとめていきます。
- プログラミングスキル
Webサービス、アプリ、ゲーム、AIなど、現代社会の様々な場面でプログラミングは欠かせない技術となっています。転職を目指す人だけでなく、業務効率化を図りたい人にとっても、プログラミングスキルは強力な武器になります。
特に、初心者にも学びやすい言語としてPythonやJavaScriptが人気です。これらの言語はWeb開発で頻繁に使われており、学習リソースも豊富です。プログラミング学習を通して、論理的思考力を養うことも可能です。 - マーケティングスキル
変化の激しい現代において、マーケティングスキルはあらゆるビジネスにとって必要不可欠です。情報収集や分析、顧客ターゲティング、Webサイト構築、SEO対策など、学ぶべきことは多岐に渡ります。
特に、デジタルマーケティングの知識は重要性を増しており、SNSマーケティングやWeb広告運用などのスキルが求められています。マーケティングスキルを身につけることで、効果的な戦略を立案し、売上向上に貢献することができます。 - 語学スキル
グローバル化が加速する中、ビジネスの場においても英語の重要性はますます高まっています。海外企業との取引や外国人とのコミュニケーションなど、外国語が堪能であれば活躍の場は大きく広がります。
特に英語のスキルは、グローバルな事業展開に欠かせません。英語の学習には、TOEICやTOEFLなどの資格取得を目指す方法や、オンライン英会話などで実践的なコミュニケーション能力を磨く方法など、様々な学習方法があります。 - マネジメントスキル
組織をまとめ、目標達成に導くマネジメントスキルは、リーダーシップを発揮したい人や、将来管理職を目指す人にとって必須のスキルです。目標設定、計画立案、進捗管理、メンバー育成など、多岐にわたるスキルが必要です。
マネジメントスキルを向上させるためには、書籍やセミナーなどで体系的に学ぶことも有効ですが、実際にチームを率いる経験を通して実践的に学ぶことが重要です。 - 動画編集スキル
動画コンテンツは、情報伝達の手段として近年ますます注目されています。商品PR、広告、教育など、様々な分野で動画編集スキルが求められています。
動画編集ソフトの操作方法だけでなく、構成や演出、効果音やテロップの活用など、視聴者に効果的に情報を伝えるためのスキルを身につけることが重要です。 - 営業スキル
顧客との信頼関係を構築し、商品やサービスの価値を伝え、成約に繋げる営業スキルは、ビジネスの根幹を支える重要なスキルです。コミュニケーション能力、ヒアリング力、プレゼンテーション能力、交渉力など、様々なスキルが求められます。
顧客との良好な関係を築きながら、ニーズを的確に捉え、最適な提案を行うことで、顧客の課題解決に貢献することができます。 - 財務・経理スキル
企業の経営活動を支える財務・経理スキルは、企業規模や業種を問わず、多くの企業で需要があります。会計知識、財務諸表分析、資金調達など、専門的な知識が必要です。
これらのスキルを身につけることで、企業の財務状況を把握し、経営判断に役立てることができます。また、経理業務の効率化やコスト削減にも貢献することができます。 - AI・IoTなどの先端ITスキル
AI、IoT、データサイエンスなど、先端ITスキルは、今後のビジネスを大きく変革する可能性を秘めています。これらのスキルは、IT業界だけでなく、様々な業界で求められています。
データ分析やシステム開発など、専門性の高いスキルが必要となる場合もありますが、オンライン学習プラットフォームなどを活用することで、基礎から学ぶことができます。 - ビジネスライティングスキル
相手に分かりやすく、正確に情報を伝えるビジネスライティングスキルは、あらゆるビジネスパーソンにとって必須のスキルです。報告書、企画書、メールなど、様々なビジネス文書作成において、論理的思考力や表現力が求められます。
相手に誤解なく情報を伝えるだけでなく、説得力を持たせ、行動を促す文章作成スキルを身につけることが重要です。 - コーチングスキル
相手の成長を支援し、潜在能力を引き出すコーチングスキルは、リーダーやマネージャーだけでなく、チームで働くすべての人にとって役立つスキルです。傾聴、質問、承認など、相手の自発的な行動を促すためのコミュニケーションスキルが必要です。
コーチングスキルを身につけることで、部下や後輩のモチベーションを高めながら、成長を促し、チーム全体の成果向上に貢献することができます。
リスキリング導入のための5ステップ
組織の持続的な成長を支えるために、「リスキリング」はますます重要になっています。では、実際にどのように実践すべきなのでしょうか。リスキリングを効果的に導入するための5つのステップを紹介します。
1:事業戦略と現在の課題の把握
リスキリングは、企業の事業戦略と密接に関連している必要があります。まず、組織全体の事業戦略を分析し、将来的な方向性や目標を明確化します。その上で、現状の組織能力と将来必要となるスキルのギャップを洗い出し、具体的な課題として捉え直します。
将来予測には不確実性が伴いますが、だからこそ、目指すべき方向性を明確にすることが重要です。目指すべき未来を具体的に描き、必要なスキルや人材を明確化することで、効果的なリスキリング戦略を立案できます。
2:リスキリングの目的を共有し従業員の意識変革を促す
リスキリングは、従業員にとって新たな挑戦であり、場合によっては不安や抵抗感を抱く可能性もあります。そのため、経営層は、リスキリングの目的や必要性を明確に示し、従業員に理解・共感してもらうことが重要です。
リスキリングを通して、従業員がどのような成長を実現できるのか、企業がどのように発展していくのかを具体的に示すことで、従業員のモチベーションを高め、リスキリングへの積極的な参加を促します。
3:効果的な教育プログラムを選択する
組織の課題や従業員のニーズに合わせた、効果的な教育プログラムを設計することが重要です。研修、オンライン学習、ビジネススクールなど、様々な学習方法を組み合わせることで、柔軟かつ効果的なスキル習得を支援します。
従業員の学習意欲を高めるためには、個々のレベルや学習スタイルに合わせたプログラムを提供することが重要です。また、社内での実施が難しい場合は、外部機関との連携も視野に入れ、最適な学習環境を提供します。
4:研修を実施し、従業員をサポートする
いよいよ研修の実施です。 教育プログラムの実施においては、従業員の状況を把握し、適切なサポートを提供することが重要です。定期的な面談やフィードバックを通して、従業員の学習進捗や課題を把握し、必要な支援を提供します。
また、リスキリングによる従業員の負担増加にも配慮する必要があります。業務と学習のバランスを調整し、従業員の健康状態にも気を配りながら、無理なくスキルアップに取り組める環境作りが重要です。
5:習得したスキルを実務で活かす
リスキリングの最終目標は、習得したスキルを実務で活用することです。習得したスキルは、実務で活用されてこそ価値を生み出します。従業員が新しいスキルを活かせる機会を提供し、実践を通してスキルを定着させましょう。
上司や同僚からのフィードバックを通して、さらなるスキル向上を促進し、「学び⇒実践⇒フィードバック⇒改善」のサイクルを構築することで、継続的な成長を促します。
効果的なリスキリングを進めるためのポイント
リスキリングは多様なアプローチが存在し、一つとして正解は定まっていません。しかし、リスキリングに取り組む際には、どの会社でも共通して注意すべき点があります。ここでは、リスキリングを進める際の4つの重要なポイントを紹介します。
1:社員の主体性を大切にする
新たな知識やスキルを学ぶには、これまでの職務内容とは異なる挑戦が伴い、社員に少なからぬ負担がかかります。そのため、本人の意欲がなければ学び続けることは難しく、目的が明確でなければ途中で挫折するリスクがあります。社員の希望や意志を尊重し、「なぜリスキリングをするのか?」という目的を明確にすることが大切です。また、支援対象者の選定を立候補制とするなど、従業員の自主性を重視した制度を整えることも効果的です
2:社内での協力体制を確立する
リスキリングを成功させるためには社内での協力体制の整備が重要です。チームや部署内でリスキリングの目的とその重要性をしっかり伝え、周囲の理解と協力を得られる環境を作ります。さらに、習得した新しい知識やスキルを他のメンバーと共有したり、実務で共に活用したりすることで、学びの質を高めることができます。
3:実務に即したプログラムを用意する
リスキリングは手段であり目的ではないため、具体的な業務に関連したプログラムを用意することが肝心です。新しいことを学んでも、現場の仕事に直結していないと感じてしまうと、学習意欲は低下します。一方、日常業務に直結した知識であれば、その学びが実際に役立つことをすぐに実感でき、モチベーションも維持しやすくなります。また、特定の課題をテーマにしたプログラムは、問題解決能力を育むと同時に、成長を実感しやすくします。
4:モチベーションを維持する工夫を行う
スキルの習得には時間がかかるため、長期的なモチベーション維持が重要です。たとえば、定期的なフィードバック、成果の共有、チーム単位での祝福など、様々な工夫を取り入れましょう。社員の声に耳を傾け、柔軟に改善を重ねることで、より効果的なリスキリングを実現できます。
リスキリングを導入している企業事例
近年、多くの企業がリスキリングに取り組んでいます。現代のビジネス環境において、企業が競争力を維持し、成長を続けるためには、従業員のスキルを継続的に向上させることが重要です。
最後に、実際にリスキリングに積極的に取り組んでいる企業の具体的な事例を紹介します。
株式会社ニトリホールディングス
株式会社ニトリホールディングスは、2025年までに約18,000の社員の8割に「ITパスポート」を取得してもらうことを目指しています。2032年までにIT人材1,000人を目指し、非IT分野出身の社員のIT人材化を進めています。段階的な教育プログラムを用意し、ITの基礎から最先端技術までをカバーしています。
富士通株式会社
富士通株式会社は、デジタル人材不足の解消を目指し「ITカンパニーからDXカンパニーへ」を経営戦略として提唱しています。リスキリングへの教育投資を4割増加させ、人材育成に取り組んでいます。ユニークな教育スタイルは、従業員自らが必要なスキルを選び研修を受けるというものです。研修プログラムは、オンラインで展開し、専門性の高いスキルや知識を提供しています。従業員のリスキリング意欲を高めるため、キャリアパスを可視化したり主要ポストの社内公募を行っています。
中外製薬株式会社
中外製薬株式会社は、2030年までにヘルスケア業界のトップイノベーターになるための成長戦略として「TOP I 2030」を制定しています。全社員を対象に、『学びたい人が誰でも学べる』をコンセプトに、会社が推奨したいデジタル・IT基礎などのコンテンツを提供しています。
味の素株式会社
味の素株式会社は、2019年から「味の素グループのデジタル変革(DX)」を推進しています。DXの推進を目的として「ビジネスDX人財」「システム開発者」「データサイエンティスト」の育成を開始しています。特に初級の認定要件「ビジネスDX人財」においては、従業員の約70%に相当する延べ2,346名が認定を取得しています。同社の取り組みは、経済産業省が実施する「DX銘柄」にも選定されています。「DX銘柄」は、 DXに積極的に取り組み、企業価値の向上に結びつけている企業を選定するものです。2021年には、味の素グループが「DX銘柄2021」に選ばれ、同社のDXに対する取り組みが高く評価されました。
株式会社三菱UFJ銀行
株式会社三菱UFJ銀行は、変化の速いビジネス環境や多様化する社会に対応するため、従業員の「キャリア自律」の実現に向けてリスキリングに取り組んでいます。研修プログラムは、スキルや知識の習得だけではなく、見識や倫理観を高め、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の推進を目指す内容です。全従業員を対象にしたeラーニングを実施し、データ分析を中心としたデジタル教育にも力を入れています。従業員のやる気を喚起するため、資格取得を推奨する「デジタルスキル認定制度」を導入し、資格取得に成功した従業員には、社内の独自称号を付与しています。
まとめ
リスキリングは、急速に変化するビジネス環境や技術的な進歩に適応するために、企業と従業員にとって不可欠な戦略です。DXの推進が進む中で、デジタル人材の育成と再教育は、単なるトレンドに留まらず、持続的な成長と競争力を確保するための必然となっています。
企業は競争力を維持し向上させるために、従業員が最新のスキルや知識を獲得できる環境を整える必要があります。一方で、従業員にとってもリスキリングは、自分の市場価値を高め、長期的なキャリア形成を可能にする手段です。双方にメリットをもたらすリスキリングを効果的に進めるためには、企業と従業員が共に積極的に取り組むことが重要です。
言い換えれば、企業と従業員が共に学び、成長する文化を醸成することが、DX時代を勝ち抜く企業力だと言えます。そして、リスキリングは挑戦であると同時に、大きな可能性を秘めています。
これからの時代は、リスキリングを通じて新たなスキルを習得し、変化に柔軟に対応できる人材を育成することが、企業の非連続な成長を左右する重要な要素となるでしょう。そのため、企業はリスキリングを自社の戦略に組み込み、継続的な人材開発を促進することが、今後ますます求められていくのではないでしょうか。