成功事例から学ぶ:企業文化を強化するCredo(クレド)の策定方法

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クレドとは、企業が信じる価値観や行動指針を簡潔に表現したものを指します。ラテン語で「信条」を意味する「クレド(credo)」が語源で、企業においては「私たちが信じること」や「私たちが守るべきこと」として定義されます。クレドは、経営理念や企業方針と異なり、具体的な行動基準として従業員の日常的な判断や行動を導くものです。そのため、企業文化の基盤として機能し、全従業員が共有することで、一貫した企業活動を支える役割を果たします。
クレドの重要性が特に強調されるのは、企業が急速に成長している時期や、多国籍展開をしている場合です。これらの状況下では、全社員が共通の価値観を持ち、同じ方向に進むための指針が求められます。クレドは、その企業が何を大切にし、どのように行動すべきかを明確にし、企業全体の結束力を高めるための重要なツールとなります。

      クレドが企業文化に与える影響

      クレドは、企業文化を形成し、強化する上で非常に大きな影響を与えます。企業文化とは、企業の価値観や行動規範、従業員の習慣や態度などが積み重なって形成されるものですが、クレドはその文化の中心的な柱となります。クレドが明確に策定され、それが従業員に浸透すると、全員が同じ価値観を共有し、同じ行動指針に基づいて行動するようになります。これにより、組織全体が一体感を持ち、外部環境の変化にも柔軟に対応できる強固な企業文化が形成されます。
      クレドが従業員の行動を統一する理由は、そのシンプルさと普遍性にあります。クレドは短く、覚えやすい言葉で表現されるため、従業員が日常の業務において自然と意識できるようになります。さらに、クレドが企業のブランド価値や顧客への約束を体現するものとなるため、従業員がクレドに基づいて行動することで、企業のブランドイメージが一貫して強化されます。

      クレド策定のための基本ステップ

      クレドを効果的に策定するためには、いくつかの基本的なステップを踏むことが重要です。まず第一に、企業の価値観とビジョンを明確にすることが必要です。これは、クレドが単なるスローガンに終わらず、企業の根本的な価値観に基づいたものとなるための第一歩です。企業の創業者や経営陣が大切にしてきた理念や、企業が目指す将来の姿を明確にし、それをクレドの核として設定します。
      次に、ステークホルダーの意見を取り入れることが重要です。クレドは、従業員だけでなく、顧客やパートナー企業など、企業に関わるすべてのステークホルダーに影響を与えるものです。そのため、ステークホルダーとの対話を通じて、彼らの期待や要求を反映させることで、より広く共感を得られるクレドを作り上げることができます。
      クレドのコアメッセージを決定する際には、シンプルで覚えやすい言葉を選ぶことが大切です。クレドは、従業員が日常的に意識し、行動に移せるものでなければなりません。そのため、複雑な表現や曖昧な言葉は避け、誰もが理解しやすい言葉を使って、クレドを文書化します。
      最後に、策定されたクレドは経営層からのフィードバックを受け、最終的に決定されます。このプロセスを経て、クレドが企業全体の方向性を示すものとして、全従業員に共有される準備が整います。

      クレドの文書化とデザインのポイント

      クレドを文書化する際には、言葉選びとデザインに特に注意を払う必要があります。クレドは、シンプルで覚えやすく、心に響くものでなければなりません。そのため、具体的で分かりやすい表現を用いることが求められます。また、クレドは単なる言葉の羅列ではなく、企業の価値観や目指す方向性を直感的に伝えるものであるべきです。
      デザインにおいては、クレドを視覚的に強化する要素を取り入れることが効果的です。例えば、クレドの言葉を強調するために、ロゴやシンボルを取り入れることで、視覚的に記憶に残りやすくなります。また、クレドをポスターやデジタルサイネージとして社内外に表示することで、従業員だけでなく、訪問者やパートナー企業にも企業の価値観を伝えることができます。
      クレドの表示方法も重要です。オフィスのエントランスや会議室、従業員が日常的に目にする場所にクレドを掲示することで、常に意識される環境を作り出します。また、デジタルツールを活用して、クレドを社内のイントラネットやモバイルアプリに表示することで、リモートワークを含むすべての従業員にクレドを浸透させることが可能です。

      クレドの社内浸透方法

      クレドを社内に浸透させるためには、効果的なコミュニケーション手段と継続的な取り組みが必要です。まず、クレドを社内で共有するためのコミュニケーション戦略を策定します。これは、トップダウンのアプローチだけでなく、ボトムアップのフィードバックも取り入れることが重要です。経営陣がクレドを直接説明し、その意義や実践方法を従業員に伝えることで、全社的な理解が深まります。
      新入社員研修や定期研修では、クレドの理解と実践が重点的に扱われます。特に新入社員に対しては、クレドを基にした行動規範を早期に身につけさせることが大切です。また、定期的な研修を通じて、クレドを改めて確認し、従業員が日常業務にどのようにクレドを反映させるべきかを考える機会を提供します。
      クレドを日常業務に取り入れるための仕組み作りも欠かせません。例えば、業務報告書や会議の議事録にクレドに基づいた行動や決定を記録するようなルールを設けることで、クレドが実際に業務に反映されるよう促進します。また、クレドに基づく行動を評価するための仕組みを導入し、クレドを体現した従業員を表彰することで、他の従業員にも良い影響を与えることができます。

      クレドを実践するためのリーダーシップの役割

      クレドを実践する上で、リーダーシップの役割は極めて重要です。経営陣や管理職がクレドを体現し、自らがその模範となることで、従業員はクレドの重要性を理解しやすくなります。リーダーシップ層がクレドに基づいた意思決定を行うことで、クレドが単なる理想論ではなく、実際のビジネスに直結するものであることが示されます。
      クレド実践を促進するためのリーダーシップ研修も効果的です。この研修では、リーダーがクレドをどのように業務に適用し、従業員に伝えるべきかを学びます。また、リーダーがクレドに基づいた行動を取ることで、従業員にとってもクレドが身近なものとなり、日常業務で実践されるようになります。
      意思決定プロセスにおいても、クレドを基準にすることが求められます。例えば、新しいプロジェクトや取引先の選定に際して、クレドに合致するかどうかを一つの判断基準とすることで、企業全体で一貫した行動を取ることができます。このようなリーダーシップの取り組みが、クレドの実践を組織全体に浸透させ、企業文化を強化する鍵となります。

      クレドの効果を測定するための手法

      クレドの浸透度や効果を測定することは、クレドが実際に企業文化にどのように影響を与えているかを理解するために重要です。まず、クレド浸透度を測定するためのアンケートやフィードバックシステムを導入します。これにより、従業員がクレドをどの程度理解し、日常業務に取り入れているかを定量的に把握することができます。
      また、クレドに基づく従業員行動のモニタリングも効果的です。例えば、従業員がクレドに則った行動を取っているかどうかを観察し、定期的に評価する仕組みを設けることで、クレドの実践度を確認できます。さらに、クレドが企業業績にどのように影響しているかを分析することも重要です。クレド実践による顧客満足度の向上や、従業員のモチベーション向上がどのように業績に結びついているかをデータで示すことで、クレドの効果を具体的に評価できます。
      これらの手法を通じて、クレドが企業文化にどのように浸透し、具体的な成果をもたらしているかを明らかにし、必要に応じて改善策を講じることができます。

      成功事例1:クレドを活用した企業文化改革

      成功事例として、ジョンソン・エンド・ジョンソンの「我が信条(Our Credo)」を挙げることができます。このクレドは、1943年に当時の経営者であるロバート・ウッド・ジョンソンが策定し、現在まで企業の文化の中心として機能しています。「我が信条」は、顧客、従業員、コミュニティ、株主のすべてに対して誠実に責任を果たすことを誓っています。
      ジョンソン・エンド・ジョンソンは、このクレドを基に企業文化を築き上げ、製品開発から従業員教育、CSR活動に至るまで、クレドをあらゆる活動の中心に据えています。例えば、1982年のタイレノール事件において、ジョンソン・エンド・ジョンソンは「我が信条」に基づき、迅速かつ透明性のある対応を行い、顧客の安全を最優先に考える企業姿勢を示しました。この行動は、企業としての信頼を守ることに成功し、結果としてブランド価値の向上にも寄与しました。
      この事例は、クレドが企業文化を強化し、組織全体の行動を統一する強力なツールであることを示しています。ジョンソン・エンド・ジョンソンの成功は、クレドが単なるスローガンに留まらず、実際の行動を導く指針となることで、企業の持続可能な成長に貢献することを証明しています。

      成功事例2:グローバル企業におけるクレドの浸透

      多国籍企業であるスターバックスも、クレドを活用して企業文化を浸透させた成功事例の一つです。スターバックスは、「人々の心に深く根ざした企業文化を持つ」という理念を掲げており、これを基にしたクレドが全世界の店舗で共有されています。
      スターバックスは、各国の文化や風土を尊重しつつ、クレドを通じてグローバルな一体感を醸成しています。例えば、バリスタの接客スタイルや店舗運営において、クレドに基づくおもてなしの心が徹底されています。これにより、世界中どこにいてもスターバックスで同じ体験ができるという一貫性が保たれています。
      また、スターバックスはクレドを社内研修や日常業務に取り入れるだけでなく、地域社会との連携を強化する活動にも活用しています。各店舗が地域のコミュニティに貢献する取り組みをクレドに基づいて行い、グローバル企業でありながらも地域密着型の企業文化を築き上げています。
      この事例は、異文化の中でクレドを浸透させ、企業全体で統一感を持つことの重要性を示しています。スターバックスの成功は、クレドがグローバルな企業文化の基盤として機能し、持続可能な成長と社会的信頼を築くための強力なツールであることを証明しています。

      クレドを活用した企業の長期的成長戦略

      クレドは、企業の長期的な成長を支える重要な要素です。クレドがしっかりと浸透している企業では、従業員全員が同じ価値観を共有し、それに基づいて行動するため、一貫性のある経営が可能となります。これにより、企業は外部環境の変化にも柔軟に対応しながら、持続可能な成長を実現することができます。
      さらに、クレドを基盤としたイノベーションの促進も重要です。クレドに基づいて新たなビジネスチャンスを見出し、従業員が積極的に新しいアイデアを提案する環境を整えることで、企業は継続的に成長し続けることができます。例えば、クレドが掲げる価値観に沿った新製品の開発や、社会貢献活動を通じて、企業のブランド価値を高めることが可能です。
      クレドはまた、企業の社会的責任(CSR)活動においても重要な役割を果たします。クレドがCSRの指針となり、企業が社会に対してどのように貢献すべきかを示すことで、企業の社会的信頼が高まり、長期的な成長に繋がります。クレドを基盤としたCSR活動は、企業の評判を高めるだけでなく、ステークホルダーからの信頼を得るためにも重要です。
      このように、クレドを活用した長期的な成長戦略は、企業が持続可能な発展を遂げるための強力な手段となります。

      クレドの定期的な見直しと改善方法

      クレドは一度策定されたら終わりではなく、定期的に見直し、改善することが重要です。企業が成長し、社会や市場の状況が変化する中で、クレドもそれに応じて進化させる必要があります。定期的な見直しを行うことで、クレドが常に企業の現状に適合し、実践されるものとなります。
      クレドの見直しには、従業員やステークホルダーからのフィードバックを積極的に取り入れることが効果的です。アンケートやワークショップを通じて、クレドがどのように受け取られているか、実際に業務にどのように反映されているかを確認し、必要に応じて修正を加えます。また、経営陣がクレドの進化を主導することで、全社的な取り組みとしてクレドの改善が行われます。
      クレドを進化させるための長期的な戦略も必要です。企業のビジョンや戦略に応じて、クレドを段階的に見直し、適切なタイミングで改訂することで、常に企業の方向性と一致したクレドを維持することができます。

      まとめ:企業文化を強化するクレドの重要性

      クレドは、企業文化を強化し、企業の成長を支えるための重要な要素です。クレドを策定し、従業員全員がその価値観を共有することで、企業は一貫した行動を取ることができ、外部環境の変化にも柔軟に対応できるようになります。また、クレドを基盤としたリーダーシップやイノベーションが促進され、企業の長期的な成長を支える力となります。
      さらに、クレドは企業の社会的責任を果たすための指針ともなり、ステークホルダーからの信頼を得るための重要なツールです。クレドを定期的に見直し、改善することで、企業は常に時代の変化に対応しながら、持続可能な発展を遂げることができます。
      クレドの策定と実践を成功させるためには、明確な価値観に基づいた策定プロセスと、効果的な浸透手段が欠かせません。そして何よりも、クレドを実践するためのリーダーシップと、企業全体での共有が重要です。クレドを活用した企業文化の強化が、企業の持続可能な成長と社会的な信頼の向上に寄与することを目指して、積極的な取り組みを進めることが求められます。

      マーケティング部 プロモーションチーム 町田あや

      筆者:
      マーケティング部 プロモーションチーム 町田あや

      新卒でHR業界へ入社し、キャリアアドバイザーとして企業と働く人の橋渡しに奔走。人材不足に悩む企業の採用ブランディングから、人材育成プログラムの構築、新人研修サポートまでさまざまな業務に従事。自身の可能性を広げるためTech系企業への転職活動をしていたところ「"はたらき"から、笑顔を」という経営ビジョンに共感してスカイアークに入社。HR業界で得た知見を活かしたコンテンツ制作などプロモーション業務を担当中。

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